最近「治験」って言葉をニュースやSNSなどでよく見ませんか?
ここ数年だと2020年1月頃に感染が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行した際、ワクチン関連のニュースやSNSで話題になっていたかと思います。
治験なくしては薬を安心して使えない バイトではなく患者さんを支えるボランティア活動
私たちの日常にあって、当たり前にあるくすりや病院にある医療機器、これらを販売する前には必ず「治験」という臨床試験を行っています。
なぜ、治験の名前があまり知れ渡らず、むしろあまりよい印象を抱けないのか。
それは、人を使った実験というイメージが先行しているからだといえます。
ですが、治験は法律の定めた省令を元に行う臨床試験です。
そのため、治験に協力していただいた治験モニター(ボランティア)への理解と同意がなければ試験は行えません。
また、報酬が発生している為アルバイトといわれていますがこれは間違いです。
もちろん、副作用のリスクは伴います。
ですが、治験を知っておけばご自身が病気になり医療が必要になった時にこの記事を読んでもらえれば少しでも不安が取り除けるかと思います。
治験とは
治験とは、臨床試験の一種です。
臨床試験とは人を対象として行う試験全体のことを指します。
治験には4つの段階があり、参加する被験者を段階で振り分け、医薬品や医療機器の効果性と安全性を確認するための検証試験を実施しており、日本では約700施設で治験を行っています。
治験の種類
治験は4つの段階で参加できる人も変わってきます。
なので治験に参加した人の体験談を調べたり聞いていたとしても同じとは限らないのです。
治験と人体実験の違い
治験と人体実験はどちらも人を対象にした実験ですが、以下の2つの点で大きく異なります。
- 治験は被験者(治験モニター)の同意を得て安全を最優先して実施される試験
- 人体実験は本人の意思を無視して行われる実験
治験は新しい薬や医療機器の開発のために重要なプロセスです。
そのため、被験者(治験モニター)の同意を得て安全性を最優先して実施することが法律で決められてます。
治験の安全性と法律
治験を実施する際には被験者の安全が最優先されなければなりません。
なので薬事法と厚生労働省が定めたGCP(Good Clinical Practice)と呼ばれている「医薬品の臨床試験実施の際に企業や医療機関が守るべき基準」という省令があります。
厚生労働省のHPには、治験の実施についての遵守項目、ルール違反した対象への法的処分などが記載されています。
厚生労働省GCPについて実際起きた違反の処分報告はこちらのページを読んでください。
治験は危ないの?
治験を行うには、法律により定められたルールがありますので、十分に安全が確保されているといえます。
しかし、承認されていない新薬、医療機器、既存の改良薬などを投与するので副作用のリスクを伴うことも事実です。
そのため、治験に参加する際には治験のリスクとメリットを十分に理解した上で慎重に判断することが大切です。
治験中に起きる主な副作用
治験による副作用の症状には以下の症状があります。
一般的に起こる副作用 | 発熱、頭痛、かゆみ、のどの痛み、めまい、発疹、嘔吐、吐き気、不眠、下痢 |
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重い場合の副作用 | 白血球などの血液異常、感染症による皮膚病、アレルギー性ショック、消化器障害 、腎機能障害、神経障害、呼吸器障、肝機能障害、心血管障害、免疫障害、骨髄機能障害、筋骨格系障害 |
ただしこれらの症状は治験薬や治験機器の種類によってことなっています。
また副作用が起きた場合速やかに処置が行われ、参加者へ継続意志の確認が行われます。
副作用で起きた事故
残念ながら、過去には治験による事故が起きています。
- 2016年フランスで起きた事故では健康な男性参加者5人のうち1人が死亡他4人が神経合併症を発症し重篤。
- 2019年日本ではてんかん治療薬を投与した男性が電柱から飛び降りて死亡。
厚生労働省は、治験との因果関係を否定できないと発表しています。
治験で起きた副作用への補償
治験で起きた副作用の補償には以下の3つがあります。
- 治療でかかった医療費
- 入院が必要になったときに伴う医療費以外の費用(交通費など)の医療手当
- 健康被害で被った損害(死亡、障害、逸失利益(いっしつりえき)の補償金
ですが、治験と因果関係がない症状の場合は補償はされません。
例えるならば「治験中に散歩をしていて転んで骨折した」などは補償にはなりません。
治験バイトについて
治験バイトとは労働を対価に報酬を得るアルバイトと認識されがちですがこれは誤りです。
法律では、医療機関や製薬会社が新しい医薬品、医療機器の効果や安全性を検証してもらうため応募した人の同意を得て協力していただく有償ボランティアまたは治験モニターと呼ばれています。
報酬は謝礼金/負担軽減費/治験協力費と区分されます。
また、治験バイトには2つの種類があります。
治験薬の臨床試験
未承認の医薬品の有効性や安全性を検証します。
治験薬の種類は新薬だけでなく、既存の薬の改良品や新規の治療法の開発に用いられる薬など多岐にわたります。
医療機器の臨床試験
医療機器の有効性や安全性を検証します。
医療機器の種類は手術器具/検査機器/治療機器などさまざまなものがあります。
参加条件
治験モニターに参加するためには以下の条件を満たす必要があります。
- 健康であること
- 治験の目的や内容について十分に理解していること
- 治験の同意書に同意すること
また、種類によっては以下の条件を満たす必要があります。
- 特定の病気や疾患を持っていること
- 特定の薬を服用していること
仕事内容
新薬や新開発の医療機器にサプリメントなど、さまざまな商品について、応募先の製薬会社または医療機関から説明を受けます。
有効性や安全性に関するデータを取得することが目的です。
薬開発のためのモニタリング臨床試験では、通院と入院で振り分けられます。
通院タイプの治験モニターの場合はそれほど長時間の滞在は必要ありませんが、入院タイプの治験モニターの場合数日から数か月入院する必要があります。
主に参加者が協力する内容は以下のとおりです。
- 治験薬の服用
- 血液や尿検査
- アンケート回答
メリットとデメリット
治験モニターには以下のメリットとデメリットがあります。
メリット
- 報酬を得られる
- 新しい医薬品や医療機器の開発に貢献できる
- 治療薬や治療法を待っている患者さんへの社会貢献
- 自分の体調や体質を把握できる
- アルバイトではないのでいつでも辞められる
- 治験期間中の検査費用は依頼している製薬会社が負担
デメリット
- 副作用などのリスクがある
- 通院や検査の時間が掛かる
- 治験の期間による時間拘束(一日~数か月決められた日に必ず来院しなければならない
- 来院の回数が増えることもある
治験に向いている人
治験モニターに向いている人は治験による生活に制限があってもストレスが少ない人です。
病院タイプの治験では、長期間入院することが多く、運動や食事などの生活習慣が制限されることが多いです。
内容によっては集団生活をお願いする場合もあり、そのため治験モニターに適しているのはストレスを感じにくく何事も柔軟な対応ができて治験を通じて社会に貢献することに喜びを感じる人です。
参考になるか分かりませんが筆者は治験ではありませんが、数週間から半月の入院と手術を3回行ったことがあり、一回の入院で採血、点滴の差し替えを数十回行ったことがあり肉体的にも精神的にも辛かったです。
報酬の相場
治験の種類や治験薬の種類によって相場は異なります。
入院タイプの治験は通院する治験よりも一般的に謝礼金が多く支払われる傾向にあります。
- 入院治験の謝礼金は1泊あたり 15,000から30.000円
- 通院治験の謝礼金は1回あたり 7,000から10,000円
なお、まれに通院タイプの治験の場合で、通院先の医療機関が大学病院などの場合1回あたり7,000円の協力費になることがあります。
また、治験の期間が長くなるほど、協力費が多く支払われる傾向にあります。
治験と税金
治験に対する謝礼金(負担軽減費)については、金額によっては確定申告(該当する場合は住民税に関する申告)が必要となる場合があります。
確定申告の基準は1年間の報酬を含むその他の所得が20万円を超えるかどうかです。
本人や家族が扶養である場合は、扶養要件にも関わってきますので参加する前に必ず確認することをおすすめします。
また、確定申告が必要とされる方は治験で掛かった経費(交通費など)は所得から控除することができます。
その際、使用した経費の領収書が必要になりますので保管しておいてください。
交通費など領収書が発行されない経費についても日付/行き先/金額が記載された書類やメモを保管してください。
※治験協力費(謝礼金/負担軽減費)=雑収入
雑収入-必要経費=雑所得
まとめ
いかがでしたでしょうか?
くすりには治験が必ず関わっているということ、リスクはあるけれど処置や対応がしっかりされていることなど初めての方が治験へ参加する前に知っておいた方がよい内容をご紹介させていただきました。
もし治験に参加するときには、まずは健康であること、定められたルールを守り、医師からの注意点をよく確認したうえで治験に臨んでくださいね。