夜の街で華やかにシェイカーを振り、立ち寄る人々の心を癒すバーテンダー。そんなバーテンダーになるためには、どのようなステップや能力が必要なのでしょうか。資格はいるの?未経験でも大丈夫?どんな人が向いている?そんな疑問にお答えします。
バーテンダーとは
バーテンダーとは、バーでアルコール飲料を提供し、顧客にサービスを行う人を指します。名前の由来には諸説ありますが、英語の “bar”(バー、カウンター)と “tender”(手を差し伸べる、提供する)の合成語だと言われています。
また、1830年代のアメリカにおいて、酒場は樽酒を振る舞う場所であったところ、勝手に樽から飲んでしまう荒くれ者から酒を守るために、樽と客の間に境界線として置いた板をバーと呼んだことから、バーが酒場を意味するようになり、番人を意味するテンダーが合わさってバーテンダーとなったという説もあります。
日本では、1860年に横浜外国人居留地に開業した横浜ホテルに設置されたバーが第一号と言われており、当時は外国人向けの営業だったそうです。
バーテンダーの仕事内容
バーテンダーの仕事は、カクテルをはじめ様々なアルコール飲料を作って提供することです。世界各国のお酒を調合して、お客様の好みに応えます。
清掃・道具の手入れや、衛生管理も必要です。在庫管理や発注業務を任されることもあるでしょう。
働く場所は、バーやホテルのラウンジが主ですが、結婚式場や船上パーティなどに呼ばれて出張することもあります。
また、最も重要なのは、お客様ひとりひとりに対して居心地の良い空間を提供することです。バーに訪れる人は、そこに訪れる理由が必ずあります。何を求めて来店しているのかを読み取り、それにふさわしい接客をすることが何より大切です。
未経験からバーテンダーになる方法
バーテンダーに資格は必要ありません。未経験から始めることも可能です。未経験の人を育てたいと考えているバーもありますので、技術や知識がなくても大丈夫です。
また、バーテンダーには、年齢制限がありません。未成年でもなることはできます。但し、20歳未満の飲酒は禁じられており、18歳未満は深夜の労働ができません。そのため、バーテンダーとして本格的に仕事ができるのは、20歳以降になります。
アルバイトで修行する
バーテンダーになる一番の近道は、お店で修行することです。バーテンダーには技術が必須なので、とにかく経験を積むことです。見習いとして精進し、一人前のバーテンダーを目指しましょう。お店によって学べる技術は様々なので、どのような修行をしたいかを考えてお店を探してみましょう。
スクールに通う
学校で知識や技術を学ぶ方法もあります。各種バーテンダースクールやカクテルスクール、調理師やホテルの専門学校などがあります。
費用や時間がかかるというデメリットはありますが、お酒以外にも経営について学ぶことができたり、バーテンダーを目指す仲間と励ましあったり、業界の人脈が広がるなど、メリットもたくさんあります。
バーテンダーに求められる能力
バーテンダーは、お酒に関する知識や技術だけでなく、おもてなしの心とコミュニケーション能力が必要です。これは、教科書で学ぶことができないので、実際にお客様と接して、反応を見ながら身につけるしかありません。居心地の良い空間を提供するには、どのような能力が求められるでしょうか。
人を観察する力
バーを訪れる理由は人によってそれぞれです。ひとりで静かにお酒と向き合いたい人もいれば、バーテンダーとの会話を楽しみに訪れる人もいます。良いことがあって気分が高揚している人もいれば、辛いことから逃れたいと思っている人もいるでしょう。ひとりひとりにふさわしい接客をするためにも、人を観察する力が必要です。
人の話を聞く力
お客様が話をする動機も様々です。話したいことを引き出してあげられるようなスキルがあると最高ですが、そうでなくとも、気持ちよく会話ができるよう、「聞く」ことが大切です。時に話をふり、適度に相槌を打ち、相手の許容範囲を伺いながら質問ができるようになるとよいでしょう。
継続して勉強する力
バーテンダーが覚える知識や技術は膨大です。お酒は次々と新しい商品が出てきます。それらの特徴を把握し、お客様に提案できるようにするためには、常にアンテナを張り、取り入れて行く姿勢が必要です。バーテンダーの勉強はエンドレスです。継続する力が必要でしょう。
接客マナー
お店によって、親しみやすさが売りであったり、一歩引いた姿勢が求められたりと、そのスタンスは様々ですが、どちらの場合も礼儀正しく接することは最低限のマナーです。
立ち入り過ぎたり、余計なことを言ったりしないように気を付けましょう。他の人にお客様の情報をもらすことも、トラブルの原因になります。継続して通いたいと思われる店作りを常に意識しましょう。
バーテンダーの資格
バーテンダーの国家資格はありませんが、民間資格はいくつかあります。取得しなければならないものではありませんが、取得がコンクールの条件であったり、待遇やお客様からの信頼において有利に働く場合があります。また、知識を得るために有益なものでもあります。メジャーな資格は2つあります。
一般社団法人日本バーテンダー協会(N.B.A.)による「N.B.A.検定試験制度」
最もメジャーな日本バーテンダー協会(NBA)による検定です。満20歳以上でアルコールを扱う飲食店に勤務している人なら誰でも受けることができる「バーテンダー 呼称技能認定試験」(すべて学科試験)や、会員限定の「インターナショナル・バーテンダー呼称技能認定試験」(実技試験を伴う)などがあります。
プロフェッショナル・バーテンダーズ機構(P.B.O.)による「プロフェッショナル・バーテンダー資格認定試験」
「バランスのとれたバーテンダーの育成」および「バーテンダーの資質の向上」を目的とした試験です。学科試験の他、カクテルを作る実技試験もあります。機構のメンバー以外の人や、バーテンダーを目指して勉強中の人も受験できます。
その他
上記2つ以外にも、「ウイスキーコニサー」「カクテルアドバイザー」「スピリッツアドバイザー」「ビアアドバイザー」などがあります。
バーテンダーに向いている人
お酒に関心が高い人
やはり自分が好きなものは学ぶのも楽しいですよね。結果的に高品質な商品を提供することができるようになるでしょう。
研究熱心な人
グラスや温度、合わせる食事など、お酒はちょっとしたことで姿や味を変化させます。研究熱心な人は、お客様に色々な角度から提案できるようになるでしょう。
衛生意識の高い人
食の安全という観点からも、心地よい空間作りという意味からも、衛生は飲食店にとって必須の事項です。常にグラスや道具、カウンターはじめ店内を清潔に保てるよう、汚れや乱雑さに気付く意識が必要です。
人を喜ばせるのが好きな人
お客様に興味を持ち、楽しませたいと思う。話題を広げるためにネタとなる情報や知識を増やそうと思う。そんなホスピタリティを持つ人は、会いたいと思ってもらえるバーテンダーになれるでしょう。
体力のある人
バーは営業が深夜・早朝に及びます。また、長時間の立ち仕事は足腰に負担がかかります。アルバイト以外の生活と両立させることも考えると、ある程度の体力は必要と言えるでしょう。
バーテンダーのバイトで得られるもの
お酒の知識
バーでは、自分では買えないような高級酒や、そもそも目にしないような希少なお酒に触れることができます。文献やネット情報だけでは学べない機会がそこにはあります。
接客スキル
思いやりと想像力はバーテンダーにとって大切なスキルですが、これはその先どんな仕事についても役立つことは間違いありません。
知識と教養
様々なお客様と接するには、幅広い知識と教養が必要になって来ます。会話の幅を広げる訓練は、プライベートでもあなたを助けることになるでしょう。
人との出会い
あなたが幸せな時間を提供したら、きっとあなたを目当てに通ってくれるファンもできることでしょう。そうなったら、それはあなたの大きな自信になるはずです。また、上手にバーを利用する格好良いお客様からは、大人の嗜みを学べるかもしれません。バーにはそのような出会いのチャンスが沢山あります。
バーテンダーの大変なところ
昼夜逆転の生活
体調管理はもちろんのこと、人と違う時間帯の勤務なため、親しい人と良好な関係を保つには工夫が必要になります。彼氏にしたくない3Bの一つと言われるゆえんかもしれませんね。大学生なら翌日の授業スケジュールも考慮しなくてはならないでしょう。
覚えることが多い
新しいお酒や世間の情報を常にチェックして、知識や技術をアップデートするのは、なかなかに大変なことです。また、お客様の顔や名前、最後に飲んでいたお酒などを覚えることによって、ひいきにしてもらえるようにもなります。仕草や立ち居振る舞いも覚えるべき大事な要素でしょう。少しずつ身に付けるよう、努力しましょう。
まとめ
アルバイトでバーテンダーになるのに資格は必要ありません。大事なのは、学び続ける姿勢と、おもてなしの心です。様々な人とお酒を介して会話ができる貴重な場で働くことは、その後の人生に影響を与える大切な時間となるでしょう。
お酒が好きな人、人とのコミュニケーションに関心がある人、人の癒しとなりたい方は、バーテンダーという仕事を考えてみてはいかがでしょうか。